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 ホーガン。
日本国内でなにかと人気のあるSF作家です。
アメリカよりも日本での人気のほうがあるんじゃないかな。星雲賞受賞3回だし。
SFの体裁をとった、本格パズラーとも呼べる作風が、日本人に受けいれられる要因でしょうか。

実際、主人公のハントは、ラスト近くで関係者を集めて「探偵、皆を集めて、さてと言い」とばかりに推理を披露します。
その直前では、ハントが全ての真相に気付いたと思わせる場面があり(ガニメデの地表に一人立ち尽くすシーン)
、その時点で読者に向けて全ての情報は開示されているというあのミステリー独特の『匂わし』があります。
そこからの終盤への雪崩れ込むような事実の開示、そして確かめるべくもない真実に思いを馳せ、さらにラストシーンの胸を打つ情景、とミステリーでお馴染みの光景が広がっています。
この展開が実に巧い。

ただ、アメリカにおけるメジャーなSF小説群と比べれば異色の作品である事も違いないと思われます。
何せ、あっちさんのSF小説とくれば『秘密兵器』や『凶暴な宇宙人』という要素が未だに現役で(いや、大抵の場合においてこういう要素は普遍的なのだけど)、そのマッチョさと比べれば、宇宙人の由来を探るというこの作品は如何にもインドアです。

まぁ逆に、インドアだからこそ日本で受けたのだとも思うけど。
また、ハードSFによくあるような形而上学的な問題もあまり出てこなかったこと(ストーリーの主眼はあくまでも謎の解明)で、物語構成をシンプルにし、読者をストーリーに上手く引き摺りこめた事も勝因かもしれない。
謎の提示と、その解明の道筋を描くのは、科学史を辿っているようでもあり、個人的には、ジュール・ヴェルヌとか前世紀のSFの走りみたいな小説と雰囲気似ているかもしれないとも思う。
純理系SFというより、文系の香りのする作品。
たぶん、対極にあるのはグレッグ・イーガンの『ディアスポラ』。

81年に星雲賞受賞ですから、時代的には『雪風』より前ですよ。ミステリ界隈で言うなら『占星術殺人事件』の頃。
というかもう30年近く前ってのが意外だ。
30年経って科学はちょっとは進歩したけど、SF小説のほうはどうなのかな。
日本の作家さん達も大分頑張ってると思うんだけどね。
野尻抱介さん、応援しています。シュレディンガーのパンツ。
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無題
あんまり若手云々はわっかんねーけど、小川一水
鹿 2009/10/04(Sun)17:51: 編集
無題
小川の人もよいよいよい。
今は刊行分全部読んじゃって、新作待つのがちと辛い。
きりゅ 2009/10/09(Fri)01:19: 編集
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